新型コロナの恐ろしさを個人としても医療者としても実感しています

日に日にコロナウイルス検査の予約の問い合わせが増え、それと共に陽性者も急激に増えています。これだけ県内でも感染者が増えているので当たり前の結果で想定内なのですが、恐ろしいと感じるのは第4波まではほとんどの方が感染経路を特定できていたのに対し、最近の第5波は感染経路不明の方が多いことです。半数以上の方が家族も含め県外には行っておらず、市内町内の普段と同じ生活圏内で感染しています。

 

そのような中先日、診療終了間際に来院された患者様を救急車で転院搬送しました。

この患者様は前日から発熱症状があり、昼に当院の発熱外来を受診しPCR検査をして翌日の結果待ちの方でした。

発熱外来後に自宅で休んでいた所、胃の辺りに何か詰まったような、錠剤が張り付いて取れないような不快感を感じて気になったため相談の連絡をくれました。

発熱症状があり新型コロナ感染の疑いでPCR検査の結果待ちの方で、症状もはっきりせず呼吸器症状など緊急性が高いものではないため、通常はあまり再受診は受け入れられにくいかもしれません。

ただ結果待ちの状態で同じ日に2回受診したいという訴えは見過ごすことができず、来院していただきました。

とはいえ、診療受付が終了し他に患者様がいないとしても、コロナ感染を否定できていない患者様を通常の待合室に入れることはできないため、個室に隔離して抗原検査を実施しました。

抗原検査では陰性でしたので、感染対策をしながら診察、レントゲン撮影したところ肺炎などの呼吸器疾患ではなく心臓に異常があるのではないかとのことで、心エコー・心電図・採血などの精密な検査をして緊急性の高い急性の心臓疾患だとのことが判明しました。

すぐに必要な処置を行い院長が同乗し救急車にて転院搬送し、現在も集中治療を受けています。

当院に滞在していた1時間弱の間にも急激に状態が悪化していき、あのまま連絡をくれずに我慢をしていたら。もし電話で受診を断っていたら。と想像するとゾッとする事例でした。

院長が循環器内科(心臓)専門医で、集中治療や救命救急の経験も豊富なため適切で迅速な判断ができました。

感染力のかなり強いウイルスが蔓延した状態で、その裏にある別の病気に気づくことや感染しているかどうかの結果がわからない状況での診察の難しさを痛感しています。

ただ、やはりどんな状況でも患者様の訴えにしっかりと耳を傾けて異常のサインに気付けるように、一人一人の患者様に丁寧に向き合っていく必要があるのだとさらに気が引き締まりました。

そしてそこには絶対に医療者が健康でならなくては成り立たず、定期受診してくださる感染症以外の患者様が安心して受診していただける環境を守っていくことが大前提で、そのために院内のチームワークを大切に日々診療をしています。

このままだと医療が崩壊することが目に見えています。思うことはそれぞれあるかもしれませんが、とにかく今は我慢をして外出、家族以外の人との接触を控えていただきたいと思います。